もう誰のものでもない
ブライアン
世界を足し算した同級生に子供が生まれた。
空という名前をつけた長男に対して、海という名前をもらえなかった次男
<今だって世界を足し算しているはずなのに>
空の果ての果てまで行くには、
飛行機では届かないよ、
と、次男の足音が追いかけてくる。
<次男が鳴らす足音は、世界の重力のためだった>
空は、浮いている飛行船を見て、
空の果てまでいけそうだ、
と、同じ事を繰り返している。
<繰り返された世界は足し算を続ける>
小学生の頃、握り締めたままになった架空のゴムは、
今だって、握り締めたままだ。
どうしたらいい?
と、空は父にたずねる
<それは果てへ行くための方法だろうか>
誰にだって、我ままな時代はある、
と、心理学者は椅子の背にもたれる。
それはそうと、
彼らの我ままを許しているのは何のためだったのだろう。
空が沈む
もう誰のものでもない
灯りが消える。
世界の足し算は見えなくなる。
<ここが世界の果てなのだろうか>
世界に共鳴する赤ん坊の泣き声。
我ままな時代は誰にだってある、
と、同級生は目を閉じるだろう。