渡れ、鳥
霜天

紡ぎ方を忘れた鳥は、手のひらに何を刻めばいいのか
温度差、呼吸の深い、遠い
渡ることの出来なくなってしまった彼らを
僕らは繋ぐことで
   (手のひらだったのか、どうか)
          温めようとも、しない


都会の空は、吸い込むことを覚えた
風景の一番端に立った僕の影が
視線の隅で混ざり合っている
灰色の道と空と、海と、間の線
誰かが、「底だ」と呼んでいた
この空は吸い込むことを覚えた
吸い込むだけ、吸い込んで
耕す手を、誰も教えていない


飛び方を忘れたわけではなく
渡ることを夢見ない、わけでもない
離れては、掴み
壊しては、触れる
手のひらの、温度差、呼吸の深い、遠い
真夜中の深いところ
この街の、底
灰色の道と空と海が混ざり合った場所
紡ぎ方を、ひとつひとつを
   (越えるように)
      手のひらをひとつ、叩く



都会、の空
一筋の東京タワー
君は支えていると言い
僕は支えられてると言う
せめて道標にはなれ、と



渡れ、鳥
君は呟く
辛く命じるようでもあり
それは歌う、ようでもあり


自由詩 渡れ、鳥 Copyright 霜天 2008-05-08 23:01:46
notebook Home 戻る