ダ・・・い・・ジョ・・・・・・う・ブな散歩
草野大悟

散歩をした

車椅子に君を乗せて

君は
新しい家を見に行く約束を
楽しみに待っていたけど

疲れ切った君を
ぼくは
新しい家まで
連れては行けなかった

散歩をした

病院の近くの道を

子どものころ
君が住んでいた町を

左腕を
左手首を
ねじ曲げられ
ほとんど曲がらない左足を
きみは車椅子に乗せて
骨盤の歪みから
顔を左45度にむけ
右手にタオルを握りしめ
嚥下障害で溢れ出る唾液を
懸命に拭こうとしていた

疲れた?
う〜んん、疲れてないよ
大丈夫?
ダ・・イ・・・ジ・・ョ・・・・・・ウ・・・・・・・ブ
部屋にかえる?
ううん、外がいい
じゃ、外にいようね
熱くない?
ダイジョウブ
アツクナイ
ダ・・・・・イ・・・ジョ・・・・・う・・・ぶ

端正な口元から
流れ出る
粘りけのある唾液が
きみの泪のように
喉元を流れて行く

ダ・・・イ・・・・じょ・ブ

ちっとも
大丈夫じゃないのに
そんなにもつらいのに、苦しいのに
きみは。




自由詩 ダ・・・い・・ジョ・・・・・・う・ブな散歩 Copyright 草野大悟 2008-05-08 22:23:10
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