時間の部屋
sekka
誰も知らない塔の最上階に
僕たちはいつもいた
その部屋は『時間の部屋』と呼ばれ
窓からの景色は
天も地も人も時間も
すべてが見渡せた
僕たちはいつも3人で
僕は皆から『過去』と呼ばれ
『未来』と呼ばれている君に憧れていた
そして『今』はいつも糸を紡いでいた
よく晴れた日
君は楽しそうに言った
「未来は限りなく広がる時間だけど
過去は限りある時間ね」と
何も言えない僕を笑いながら
『今』は糸を紡ぎ続けた
雨が降り続いた夜
僕は久しぶりに口を開いた
「過去は未来からやって来るものだから
未来が限りないものなら
過去も限りなく続くものだ」と
君は顔色も変えず 雨の続く窓の外を見ていた
そして世界には『今』の糸を紡ぐ音だけが響いていた