僕はこころを奪われたことがない
ever
僕はこころを奪われたことがない
がむしゃらに泣いているときは自分がみていてくれるから
僕はこころを奪われたことがない
春の夜風が気持ちいいのは、お風呂から出たあとだと知っているから
僕はこころを奪われたことがない
どんなに走りこんでも吐息は孤独を晒すだけで、夜空に届きはしない
僕はこころを奪われたことがない
美しい言葉は花火のようにひらいては、いつまでもそこにいてくれないから
すべてを終えたような安らかな君の寝顔を見ても、いつ違えるかわからない旅の道中で
そんな確約は自分にもできないから
いつしか奪われた記憶があるから 満月のように過不足ない自分を目指して
片割れの自分に苛立って 付け足されては満足したりして
肉体でも言葉でもない僕は さざれ石くらいの大雑把な感じで
それなりの形を刻んでいくかもしれない