僕はこころを奪われたことがない
ever

僕はこころを奪われたことがない

がむしゃらに泣いているときは自分がみていてくれるから

僕はこころを奪われたことがない

春の夜風が気持ちいいのは、お風呂から出たあとだと知っているから

僕はこころを奪われたことがない

どんなに走りこんでも吐息は孤独を晒すだけで、夜空に届きはしない

僕はこころを奪われたことがない

美しい言葉は花火のようにひらいては、いつまでもそこにいてくれないから

すべてを終えたような安らかな君の寝顔を見ても、いつ違えるかわからない旅の道中で
そんな確約は自分にもできないから

いつしか奪われた記憶があるから 満月のように過不足ない自分を目指して
片割れの自分に苛立って 付け足されては満足したりして

肉体でも言葉でもない僕は さざれ石くらいの大雑把な感じで
それなりの形を刻んでいくかもしれない


自由詩 僕はこころを奪われたことがない Copyright ever 2008-05-07 21:21:02
notebook Home 戻る