それでも世界は美しい
たもつ

  
朽ち果てた石
その微かな記憶
落葉樹は閉ざされたが
薄く匂っている
末端という末端に
隙間という隙間に
うずら料理の美味しい店で
わたしは女に求婚した
手の甲の静脈は変わることなく
浮き上がっていた
世界はまだ美しいのか、女は尋ね
知らない、とだけわたしは答えた
夏草の繁茂する河川で護岸工事は続き
明日埋葬される
それは人の形をしていて
確かにわたしたちではなかった
知らない
わたしは繰り返した
 
 


自由詩 それでも世界は美しい Copyright たもつ 2008-05-07 19:32:39
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