残された色
乱太郎
最後の /色
残されたままに/
/ひとつの絵の具
/それは水のような色
触らずに置いておこう
(窓辺から差し込む
ぬくもりに抱かれて)
白いキャンバスの反対側に
君の色だから/僕が感じている
僕が描いた様々な色があって/君に出会う前に
もう全てを塗りつくした/思い込んでいた僕
数えきれない過去の作品/僕の知らないところにあって
君の絵/まだ描けずに
筆に付けると/
/もう無くなって仕舞いそうに思えて
水に溶かすと/
/空の向こうに消えていきそうな
(小さな部屋/白いコーヒーカップ)
君が最後にこの部屋に来たのは/いつだったろう
壁に掛けた時計/ /針がとまってしまって
何も言わずに/
/優しい君だから
携帯電話を変えた君/
/君からの手紙を待っている
思い出の/
/君の色
しばらく/このままに
水になって/
/溶けてしまないように