それでも世界は美しい
小川 葉
母さんと間違えて
息子が僕に抱きついてきた
首筋に
ぴったり口をくっつけて
おっぱいみたいに吸ってきた
ああ
母さんになるって
こういうことだったんだ
時計を見ると朝の六時
そろそろ実家の母さんが起きる頃だ
朝早くから
田んぼに行ってきた父さんが
玄関のうるさい戸を開ける音がする
離れて暮らしても
たとえ家族でも他人であっても
それでも美しい
世界はひとつここにある
ああ
父さんになるって
こういうことだったんだ
自由詩
それでも世界は美しい
Copyright
小川 葉
2008-05-06 23:00:25