表と裏とその真ん中
もこもこわたあめ

気がつくと見下ろす先にいいようのない雰囲気をまとった二人の男女がいた




彼は五円玉(みたいな形の銀貨)を手にとってそっと、
でも大胆にその(銀貨)を抱きしめた

隣でその姿を見ていた彼のフィアンセ(と思われる女)は
鳳凰の描かれた銀貨を軽く指先で空中にはじいた

宙に浮いた鳳凰は羽を燃やして二人の半歩外側をぐるっと一回り
するとどうだろう
二人は俗世界から隔離されてまるで火の輪くぐり途中の獣みたいに

彼は抱きしめた(銀貨)をスマートな動作で、
二人の中心においた

(女)は彼のその動作にすこしの笑みを浮かべ
鳳凰を手のひらにおさめて(銀貨)のうえに重ねた

二枚の銀貨はその身を紅く燃やして溶け合うように絡まりあう
するとどうだろう
二人だけの世界はただ広がるのっぺりとした無機質みたいに




そこで僕の夢は蒼い空に溶けた

彼女のあの笑顔は嘲笑だったか微笑だったかそれとも

握っていた五円玉硬貨から蒼い空のセカイを覗いた
一人占めのセカイを


自由詩 表と裏とその真ん中 Copyright もこもこわたあめ 2008-05-06 21:11:23
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