ラプンツェル
山中 烏流





「伸ばしたときには
 すぐ先の庭で
 私のしたいが
 転がることでしょう

 時に、唇は
 鼓膜を
 突き動かすために
 震えるのだといいます

 背後に広がるうみと
 目の前に咲くさざなみ
 を、前にして

 私の矛先は
 すっかりと何かを
 忘れていくのです」


少女のつまさき
 炎天下のアスファルト、裸足
  燃え落ちるための
 
 奥に囁くことは
 逃れるための内訳
 
  ひるがえす裾に
 炎が灯る前で
夢は、覚めてしまうと


少女はいま
一人分の砂漠で
雨が降るときを
じっと待っている

聞こえないうたと
届かないひとみを持って
枯れないように、そっと

傷だらけの
ましろなブラウスは
崩れないように、と祈る
おつきさまの贈り物

長く伸びる
まくろな髪の毛は
消えないように、と守る
たいようの


「小さな泉から
 囁く音がしたら
 それは、寝転がる私の
 足音なのです
 
 瞬きとは
 一日を終わらすための
 おまじないなのだと、言います
 
 夜が明けたら
 私は靴を探すために
 景色の先を
 知ることでしょう
 
 そのとき
 手のひらには
 何が、
 残るというのでしょうか」



     朝焼けの船に乗って
     夕暮れを探すところ
     私は手紙を書いては
     破くことを繰り返す

     見えない暗闇と近く
     「私」が融和しては
     また一人分の砂漠で
     目覚めることを、。




終わりは、

    「ないのですか。」




















 


自由詩 ラプンツェル Copyright 山中 烏流 2008-05-03 22:20:58
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