五月
森さかな
桜葉のような少女の手を
抱いて
うら若きわたしが泣きます
波濤の白にいくつもの
瞳は
飲み込まれて
月がいつまでも
母恋しと
ひかります
窓辺にまた
年月が降りかかるから
カーテンが落ちて
ああ
まぶしいねと
眉をひそめた少女の
薄い右の手が
枯れて
巡る午後のまん中で
泣いて
青葉を
わたしが渡ります
飛ぶとり
散る線路
子を抱く母の後ろ姿が
失ってしまった
色彩と
こぼれていった 堆積のうえ
迷子のように
ゆらゆらと
自由詩
五月
Copyright
森さかな
2008-05-03 12:09:32