感情
草野春心



  怒りがきみの総てをひたすとき
  きみは一つなぎの皮膚だ
  つま先から脳天まで体を奪われ
  きみはただのペットボトルだ



  わけもなく心が震え
  泣くことさえできないことがある
  悲しみは抽象的な感情だ
  それだけに悲しみは詩になり
  嘔吐にもなる



  忙しく未来を口にしなければ
  怒りと悲しみの果てのあきらめを
  安らぎと交換しなければ
  よろこびはやって来ないだろうか



  夕暮れの染料を
  涙のようにぽたぽたいわせて
  (でもそれは涙ではない)
  きみは真綿にしみ込ませ
  背中からぎゅうぎゅう詰め込んだ



  それだけは言葉に出来ない



自由詩 感情 Copyright 草野春心 2008-05-02 08:24:08
notebook Home 戻る