童話の続き
たもつ

 
 
言葉の近くで
酸素を見ています
午後に置き忘れた椅子から
ずり落ちているあれは
靴の始まり
裏側を覗くと
もう誰もいません


+


金歯の中に広がる曇り空を
飛行船が飛んで行きます
落ちないように
歯医者は泣き続けて
待合室のソファーの上を
男の子が素足で歩いています
 

+


立っているお巡りさんの影が
風にほどけています
帰らないことは忘れないこと
イルカの足跡を埋める音のそばで
まだ息をしています


+


鉢植えの底で
自分の名前を隠すと
水のように恥ずかしい
埋立地の荷捌場には
春より先にもう
人が来ています


+


水は水の中を流れていきます
太陽の光がゆっくりと反射して
椅子に座っていても
遠いところまで見渡せます
どうして手があるのか
その日はよくわからなかったのです



+


振り返ることなく
本の背表紙だけが
ゼリーのように並んでいます
雨上がりが合図でした
子どもたちは一斉に走り出し
青い陸橋を渡り終える頃には
雲の間から星の匂いがしてきます


+


深夜、童話は考えます
どぶ川に沿って行く
細長い貨物列車の続きを
眠っている人が輪郭を曖昧にするので
おさめようとするのですが
また溢れ出してしまいます
 
 


自由詩 童話の続き Copyright たもつ 2008-05-01 23:36:24
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