内面鏡
渡 ひろこ
またもや不意打ちに
なげこまれたアクシデント
水面がざわざわ騒ぎだす
バリケードをはりめぐらせたつもりが
いつもほんの一瞬のスキをついて
とびこんでくる
ズン と重く腹にしずんで
あざわらうかのように
平行四辺形の口や
三日月の目が
消化されずに
ゴロゴロころがる
(そう わかっている)
なすがままに呑みこんでしまったのは
凸凹にゆがんでしまった
水面のせい
鏡のように
フラットならば
入射角45度
反射角45度 で
はねかえすのに
(ほら 力をこめて)
背すじをのばし
ピンと引っぱれば
ゆるんだ水面が
まったいらな鏡になる
(これさえかかげていればダイジョウブ)
せいいっぱい背伸びして
両手を高々とあげると
やがて自ら光を放ち
礫をくだいて
だんだん重くなる鏡
支えきれなくて
思わず
反転させてしまったら
湧き出る涙をおさえられない
萎えた横顔を
映し出されてしまった