雨のち、チョコレートバー
Hitotsuyanenoshita
かなしいことなんか
ないよ
と
雨の日にであった
女の子がいった
かなしいことなんか
ないよ
チョコレートバーの
包装を
ひりひりはがして
そこから
むぐむぐ食べていた
わたしにも
くれた
包装が雨でぬれて
手がすべって
なかなか
チョコレートバーを
取り出せない
とおりかかった
きんじょの
スーパーの店員さんが
みかねて「かして」
ぬれた包装をものともせず
手早く取り出して
わたしにくれた
店員さんはスーパーの
チョコレートバー売り場を
任されている
いつも
チョコレートバーの棚の前で
チョコレートバーを
眺めている
チョコレートバーが
大好きなのだろうなと思う
スーパーに
買い物にいくと
いつも
その様子でいるのを
みつけられる
あかるい赤色の
半透明のビニール傘で
店員さんは
遠ざかっていく
チョコレートバーの
たくさん入ったレジ袋が
傘からとび出ている
ぽたぽた
雨にぬれている
でも
店員さんは
ぬれた包装をものともせず
手早く
チョコレートバーを
取り出せるのだ
わたしは
女の子がくれて
店員さんにとりだされた
チョコレートバーを
食べる
ナッツとヌガーと
チョコレートと
どこでまじっているのか
わからない
遠いところの
甘さがする
かなしいことなんか
ないよ
女の子がいった
駅前の
花時計の前は
いつも
雨が降っている