光過
木立 悟





にせものの葡萄のにおいがする
光のすきまを
さらに小さな光がとおる
貨物列車 埃の花
すぎる震え すぎる震え


高く遠く
直ぐに昇る鳥
真昼の星
青を青に打ちつける星


闇が闇に小首をかしげ
水に映る風を見る
ひとつの背が
隠しおおせぬ羽をさらし
洞のなかを蒼くのびる
鉄の涙の路をゆく


氷の棘が炎にあぶられ
いつまでもいつまでも溶けることなく
叫ぶようにゆらぎまたたき
透明を透明を透明を放ち
目を閉じ 痛みを見つめている


からだをめぐる声と光が
すべての骨に咲く花となり
見上げるもの見下ろすもの
立ち並ぶ視線の柱の向こうに
羽の眠りと共に横たわり
雨に似た唱の息をしている


収穫の日の終わりと無音
草地を分ける道と風
羽と背に降る火の花が
触れ得ぬかたち 震えのかたち
応えのかたちを骨に描く


重い甘さに閉じた片目が
草のかたちのひとつにひらき
何かをもたらし 運び去る音
砂でできた小さな月が
手のひらにまたたく音を見る















自由詩 光過 Copyright 木立 悟 2008-04-29 07:27:43
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