さーせん
仲本いすら
最近のボクはこんばんわを忘れてしまった
常に出る言葉はおはようございますとおやすみなさいだけだし
愛してる、なんてもう久しく言っていない
昔、杯を交わしたおまえとは何でも話せたような気がするけど
よく考えてみたらボクはお前のこと突き放したんだった
(すべてが今更すぎて、もう何もいえない
幸せなひとを見ると心がほくほくするんだ、と茶色の手帳に
走り書きしておいたけれど
結局ボクは優しそうなおばあさんにさえ「どけよメスブタ」と簡単に言えてしまえて
(気が付いたらタールで真っ黒なのです
もう話なんてしちゃいけないよ、と母さんに言われても
気が付いたらボクは隣の壁に向かって自分のこと
だらだらと一時間は話していられるし
お風呂場の換気扇からもれてくる上の階のひとの鼻歌を
これでもかってくらい耳を澄ませて聞いてしまう
(優しさってなんだっけ、と真顔で聞けてしまう
長い事、こんばんわとこんにちわが言えていない
でも気が付くと謝りたいことだらけで、
誰に対してもごめんなさいって言ってしまう
(こんな詩書いて、ごめんなさい
クールに泣いてみたいって、誰と交わした会話だったっけ
(こんなボクで、ごめんなさい