ゲームは続く
六九郎

先生覚えてますか
あれはまだ俺たちが幼稚園児だった頃
狭い教室に小さな椅子を丸く並べて始めるゲーム
先生に促されるまま
みんな仲良く輪になって
元気に大声張り上げて
抜け目なく椅子を狙う俺
抜け作の顔で立ち尽くすあぶれ者
ぼーっとした奴等にはもはや座るべき椅子さえないのよ
身をもって教えてくれた先生、ありがとう
最初に負けた奴なんて
あまりの疎外感に失禁しちゃってましたよね
俺たちはあなたのおかげでなんだか社会って厳しそうだなと知りました
あなたのおかげで仲間を蹴落とす喜びを知りました
勝ち残った俺たちの輝く目
床に座らされた負け犬たちを見下ろす至福

ゲームは続く

まもなく俺も立ち尽くし
そういえば俺っていいとこまでは行くんだけど
いいとこ止まりなんだよないつも
今にして思えばね
ついに座るべき椅子を奪われて
半べそで床に座らされ
見上げる勝ち残りの勇者たちの上気した横顔
輝く瞳
自分こそは最期まで生き残ることを信じ
幼いながらも課された重い務め

ゲームは続く

でもね、先生
俺たちは床に座らされたまま
もう歌ってなかったよ
遊んでましたよ
隣の奴とつつきあいながら
笑いあいながら
座るべき椅子がなくなるのも
汚い床に座らされるのも
こうしてみれば
そんなに悪いもんじゃないなって
気づかせてくれた先生
どうもありがとう

ゲームは続く


自由詩 ゲームは続く Copyright 六九郎 2008-04-28 19:52:17
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