渇き
唐草フウ
ボトルの内側に貼り付いた
水滴がつるりと滑り 落ちる
そんなあっという間にも僕たちは
死にあい 生まれあっている
細い点の中にある、線を描く息の中にある
骨が飛び出そうなくらいの
痛みに うずくまる
悲しみの水に火はあっけなく消され
く ら や み へ
その一寸 君の目線を奪えたら
もうその跡に何も来ないでほしい
小雨のなか日の暮れるときに
わたしはひとりで
うちに帰って 帰ろうとしていた
右腕に橙の点滴を打ったまま
家に帰れば
心配してくれるだろうと思った
勝手にそう
視界の悪い国道××線沿いを
スリッパであるいていた
そのままがよかった
夢の中で すれ違うものほど
いらだちかなしみわめきなくことはない
暗い部屋でひとりでに
うめいていた
そしてもうわたしは全身が
渇いていた