渇き
唐草フウ

ボトルの内側に貼り付いた
水滴がつるりと滑り 落ちる
そんなあっという間にも僕たちは
死にあい 生まれあっている

細い点の中にある、線を描く息の中にある

骨が飛び出そうなくらいの
痛みに うずくまる
悲しみの水に火はあっけなく消され
く ら や み へ
その一寸 君の目線を奪えたら
もうその跡に何も来ないでほしい










小雨のなか日の暮れるときに
わたしはひとりで
うちに帰って 帰ろうとしていた
右腕に橙の点滴を打ったまま
家に帰れば
心配してくれるだろうと思った
勝手にそう
視界の悪い国道××線沿いを
スリッパであるいていた
そのままがよかった


夢の中で すれ違うものほど
いらだちかなしみわめきなくことはない





暗い部屋でひとりでに
うめいていた
そしてもうわたしは全身が
渇いていた






自由詩 渇き Copyright 唐草フウ 2008-04-28 17:23:07
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