石の人形
服部 剛
旅先の緑の山に囲まれた
川のほとりの砂浜で
独り石に腰かけていた
これからの日々で
立ちはだかる壁を思う
鉛の心が重かった
空に燃える正午の陽を浴びながら
激しい川の流れを聞きながら
わたしが飲むべき
苦い酒の盃が遠ざかるよう
両手を合わせた
( その壁を越えたところに
( ほんとうの物語があるんだよ・・・
生と死の堺を彷徨う
病の底から立ち上がった
在りし日の作家の言葉が
萎縮していた脳裏を過ぎる
川面に目をやると
覆い被さる白波の内に
人の姿に似た石が
いつまでも倒れず
立っていた