砂木

ちょっと時間がかかりますよ と言われて
会社の休みの日を 指定した歯医者
歯を抜くなんて 何年ぶりだろう
朝から麻酔注射の痛みを思い出した

テレビでは オリンピックの火が来るため
商店街の警備体制などが映っている
祭典を祝福し守ろうという人達と
平和を手にしたい人達が
それぞれの国旗を掲げて
日々の生活を投げうって旗をふっている
スポーツの祭典 喜びの祭典という気はしない
鍛え抜かれた選手達を迎える儀式には見えない

この前 空爆の映像を見た後で
オリンピックの花火を見た時に
殺しあいと競い合いと
テレビの前の私と
同時に存在しているどうしようもなさに
サッカー場がお墓になっているというニュースに
祭典をする前にしなければいけない事が
あるのではないかと思ったのだけれど

自国の選手だけでなく外国の
素晴らしい選手達を知る事も
とても大切な事だと思えるのだ
尊敬する人達のいる国を敵視などできない
理想は歴史の前で役立たないかもしれないけれど

オリンピックの火
ルールのもとに競い合う
武器も薬物も使わない
人が人である事の誇り

私の息子は消防士として任務を果たしたのですと
反戦を訴えていた人達

あなたを死なせたくないと総攻撃の前に
投降を呼びかけられていた名騎手

地雷の砂漠を 子供の前を歩いて渡った女達
花火空爆地雷 しかけられた爆薬の中
オリンピックの火が

世界をひとつの火のもとに照らす
隠している事もあぶりだし
聖火が幾たびもの争いの中手渡してきたものは

麻酔に痺れた歯茎に歯を抜く道具があたる
痛みも感覚もないただ 機械の音がする

平和って機械なのかな
すぐには 柔らかいものしか食べないように
注意書きを貰う
会社にいくまで痛みも消えるといいけど

会社や生活をなげうって訴える人々が
オリンピックに参加している













自由詩Copyright 砂木 2008-04-27 23:10:57
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