曇天、硫黄
因子

ほんとうの絶望に出遭うまで
あと何時間何分何秒
この曇天は
とりどりのあかりで
硫黄のけむりのいろをしているから
おさない夢のおわりにみた、あのあかい
みたことのない動脈血よりもっとあかい空が
ほんとうになってしまう前に
「逃げ場など何処にもないこと」
に気づかないように
石畳をみつめて
足を出す
踏みしめる
いち、に、さん、し、
左、右、左、右、左、右、右、右、右、


電線も廃棄物も現実感も地下にうずめた
外国のようなこの街に
もうななねんも触れて
暗闇に瞳孔がひらくように
すっかり慣れてしまった眼は
当たり前にある現実の狭間の重たい翳りを
簡単にみつけだすことができる



誤魔化しのきく場所などはもうきっと
ここに幾つも残っていないから




あと何時間何分何秒か、

(わたしは顔をあげられない)

しめった石畳を数えながら


自由詩 曇天、硫黄 Copyright 因子 2008-04-25 23:54:30
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