丘の上へ 
服部 剛

昨夜は母ちゃんが 
皿洗いを終えた後 
ストレスから来る腹痛で 
じっと座り込んでいた 

今夜は親父が 
夜勤警備で老体に鞭打ち 
今頃懐中電灯を手に 
役所の廊下を照らしてる 

我家の和室に横たわる祖母は 
脳に腫れ物が一つあり 
薬で病の進行を抑えながら 
幼子の心で余生を天に委ねて眠る 

僕はといえば 
今日も路上教習の運転で 
私生活と同じようにふらふら走り 
ひとり凹んだ休憩室で顔を伏せた 

あぁ何故か知らぬが 
姿の見えないかみさまは 
人それぞれにずっしりと 
背負う重荷を乗せるらしい 

昔々 
しゃれこうべの丘へと 
よたよた歩む頬のこけた人が 
自らの命を棄てようと 
丘の上の十字架にかけられ
地上と天は結ばれた

祖母だけがクリスチャンの 
我家も何故か 
それぞれの十字架を背負い
明日の坂道を上る 








自由詩 丘の上へ  Copyright 服部 剛 2008-04-25 23:45:00
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