丘の上へ
服部 剛
昨夜は母ちゃんが
皿洗いを終えた後
ストレスから来る腹痛で
じっと座り込んでいた
今夜は親父が
夜勤警備で老体に鞭打ち
今頃懐中電灯を手に
役所の廊下を照らしてる
我家の和室に横たわる祖母は
脳に腫れ物が一つあり
薬で病の進行を抑えながら
幼子の心で余生を天に委ねて眠る
僕はといえば
今日も路上教習の運転で
私生活と同じようにふらふら走り
ひとり凹んだ休憩室で顔を伏せた
あぁ何故か知らぬが
姿の見えないかみさまは
人それぞれにずっしりと
背負う重荷を乗せるらしい
昔々
しゃれこうべの丘へと
よたよた歩む頬のこけた人が
自らの命を棄てようと
丘の上の十字架にかけられ
地上と天は結ばれた
祖母だけがクリスチャンの
我家も何故か
それぞれの十字架を背負い
明日の坂道を上る