クリエイティばらない
キリギリ
いま詩を書くということに対して詩人は触れれば剥がれる廃墟の塗膜
みたいな瘡蓋を額縁に飾って「この傷は治りかけです」と注意を促す
斜に構えたシンキングタイム理解し合えないことを前提にした会議は
今日も心地よい疲労だけを残して終わった必要なのは意味よりも言い回し
伝達よりも鍵付きカッコ閉じ発表会に批評家を呼んだのは誰だお披露目会に
ピーコを呼んだのは誰だ二束三文カタパルトで一方的に打ち上げられた
俺ラルキーのトップを狙えと言われても参加賞とトップ賞の差はトイレット
ペーパーがシングルかダブルかでしかないそれなのに吸引口からキュー
吸い込まれる僕たちは無力だ詩人は無力だだいたい世界中の良い詩を集めて
積んでもジャムの蓋一つ開きやしないのに「アウシュビッツ以後、詩を書く事は
野蛮である」なんてどんなバタフライ・エフェクトだ全ての小説家志望が
芥川賞を目指しているわけではないのと同様に全ての詩人がアウシュ
ビッツァー賞を欲しがっているわけではないことにそろそろ気付いて
欲しい金髪碧眼だか灰髪隻眼だか知らないが日本語すら読めない人間の愚行に
僕たちのポエジーを縛られるいわれなどないのだ僕らは悲劇を歌わない
なぜなら当事者じゃないから当事者の気持ちになれると思うのは傲慢だから
1945年8月6日カタカナでヒロシマ誰かの焼けた皮を踏んだ足裏
全身に刺さったガラス片の痛み知りません知りません水をください水はありません
言語化不能うめき声の厚み水面に浮ぶ腹尻顔知りません知りません
相変わらず指パッチン3秒ごとに死ぬ子ども聖火リレーの裏で忘れられた
チベットの現状知りません溢れる硫化水素プレカリアートの10年後
あらゆるものがあり大したことが起こらない僕らの日常をポエトリー
僕の目で君の手で白紙を埋めるポエトリー「木」と書けば木が立ち「森」と
書けば木が増え「ヘドが出る」と書けばヘドが出て「愛」と書けば
愛しさ募るオリジナル知ってることしか知りません感じたことしか
書けません正直者の美しい折れ枝純粋主体からなる切片たったそれしか
出来ません無力なオーウェン泣くのはおよし
みんな笑つているでせうカハカハ
言ったら終わり書いたら終わり投げっぱなしの荒野は四六時営業
カナリアも洞窟じゃなければ歌うしかないわ
「詩」と書かれた引き出しに詩を書いてポエジー
ハリネズミの距離感でもうしばらく安泰だわ