幽霊雨林
A道化






信号待ちをするときは
雨のアスファルトを
濡らす夜の光を
滑るように踏み締める車の連続の
車、車、車の
融合しているかのようなスピードに
巻き込まれないだけの重さの、足りない分を
頭から傘をかぶって埋め合わせ
信号を待たなくてはなりません
そのとき、ふと
他の何かを待ってしまったら
例えば、誰かを待ってしまったら
信号を、とにかくただ信号を
私たちは待たなくてはなりません
車の連続の
車、車、車の
融合というぬるい錯覚に
巻き込まれぬよう、吸い込まれぬよう
傘の、黒や青や白や水玉や花柄のそれぞれの色で
例えば、赤い色で
私たちは無言で顔を隠滅して
じっと
幽霊のふりをしなくてはなりません


2008.4.23.


自由詩 幽霊雨林 Copyright A道化 2008-04-23 03:02:13
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