指折り
松本 卓也

吸い込む煙に咽こんで
突き抜ける頭痛に把握する現在
何より無く何故も無く
成すべきと定めた納期を
遣り繰りするだけに生きている

山陽道に横たわるモグラ線を
時速三百キロで駆け抜ける退屈な夜
会社に入って何年を経たかを指折り数えてみた

そういえば会社に入る前
自分の食い扶持を稼げる様になった上で
やりたい事を始めたいとか言ってたっけ

今は明日や明後日に死なないように
来月の給料を少しでも多く貰えるよう
汗水を垂らすばかりでしかなく

乳臭いガキの頃見ていた夢
青臭い学生の頃目指していた道
会社に入りたてに思い浮かべた暮らし
何もかも一つをとっても叶っていやしない

何年を経たかを数える指が
何年残っているかを数える指になるまで
どれだけの現実が過ぎていくのだろう

希望や理想だけを謡う詩に
ただ眉を顰めるだけになってしまったのは
かつて自分が詠った軌跡を振り返るのを
何となく怖がっているに過ぎないというのに


自由詩 指折り Copyright 松本 卓也 2008-04-23 00:09:20
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