魚雷を避けながら
石畑由紀子

理不尽なことが多すぎる
どこまでを正当防衛としてくれますか、そうなる前に完璧なマニュアルをください
ため息の液化
5番線に電車が入ります白線の後ろまでお下がりください
エラ呼吸に切り替える
銃口が ぷしゅう と開いて
降りたい者と乗りたい者がつかの間の戦闘
浸水したホームから浸水した車内へ
背びれと尾ひれで前からの攻撃をかわし
ている最中に後ろの誰かからかかとを踏まれる
どうなっているんだ、お前は同胞ではなかったのか
ため息の液化
浸水から逃れられない
理不尽なことが本当に多すぎる
急ブレーキをかけることがありますので吊り革手すりにお掴まりください
どこにも掴まらずに
七つ先の駅までも行けてしまう車内
隣りに居合わせたリクルートスーツの女性に
僕のイルカになってくれませんか

胸の中で懇願してみる




自由詩 魚雷を避けながら Copyright 石畑由紀子 2004-07-06 22:34:54
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