「ひとつ」
長谷川智子




いまあたしは ふたりのおとこをすきでいる
そんなことはありふれたことにすぎないが
あたしには おおきおもすぎてはちきれそうなのだ


 まるいゆびのさき おおきくない て
 ちいさなかた ほそめのうで
 さいぼうたんいで いとおしい


いつかのまどろみのなかで つぶやいた
「きみといっしょならしんでもいい……」
「ばかね」
ということばがみょうにやわっこくてあったかい


 いろんなものがこれにあつまってくる そんなかんじ
 からみたい からめたい しばられたい それよりもなお しばりたい
 いつもそんなことばかりあたまのこえとしてうかんでは きえる
 ほんとうにやってみないとどうにかなるほどまでいかないし おそらくはいけないのだろう


    ***


 ほそいゆびのさき おおきな て
 おおきなからだ ふとめのこえ
 まわりをとりまくくうきが いとおしい


「こどもがほしい
 あなたのでほしい」
なぜか おもってしまった
おもいあたるふしは いくらでもある


 またしちゃった あれ
 ああ どうしよう せつない しつない
 そつなく なんてことは ふかのう




   ……あるいみ おあつらえむきかもよ
   ふたり が ひとつ ふたり で ひとつ
   あたまのなかでは、なんてね


自由詩 「ひとつ」 Copyright 長谷川智子 2008-04-21 02:53:20
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「mind & body」series.