思春期
さき
例えば
それは真っ黒な海に広がる
一滴のミルク
ゆるゆると広がり
消えて行くのか
それとも行かないのか
海の広さを
図りかねている
年月よりも尚
重い枷があるのだとして
それを振り払うために
一番先に
屑箱に入れるのは
この
なけなしの良心
赤い屋根が続く町
広がった野山
犬のキラキラ輝いた背中
車の下をどうして覗き込むの
子猫ちゃん
でておいでと
手を鳴らすは
清く正しく
残酷無比な
少年少女
虫かご
夕焼け
一人
二人と去っていき
私はやがて
孤独を知った
いつかのときのためと
ママが用意していたハイヒールを
壊したい衝動を
それとも
もっと低い靴を履いて
全ての扉を開けたい衝動を
まだ
自分のものに出来ずにいるのに
ねえ
大人になるって
いつからなのよ
眠る貴方の吐息を
いくつ数えても
全然
わからない
時だけ過ぎてく
桜
散るね
今年も
また
これよりも尚
辛いことって
この世にまだ
あるのかな