や☆さ★し☆さ★
青木龍一郎
平日の昼間から僕のアドレス帳に登録されている人間たちに片っ端から
「雲を見に行こう」とメールを送りまくった。
来てくれたのは友人の一人モモサキだけだった。
彼はメールの一時間後、ピストルを持って我が家にやってきた。
僕は、彼からピストルを奪い取り、そのまま銃口を空に向け、一匹の鳩を撃ち殺した。
「さ、河原にでも雲を見に行(ゆ)こうか」
僕らは歩きながら、ロウテンポに会話を繰り広げた。
「ねぇ、さっきの鳩食べれると思う?」
「無理だと思いますよ。食べない方がいいです。カラスだったら食べれるでしょうけど。」
「おっ。ブラックミートパイってか」
「ブラックミート知ってるんですか?カラスの肉」
「うん。ゴルフ中にカラスに襲われた石原慎太郎東京都知事の私怨によるカラス食肉化計画だよね」
「そうです。『カラスをミートパイにして東京名物にすべきだ』の発言は僕を含めた多くのゲテモノイーティングマニアからの歓声を浴びましたよ。」
「カラスは指定暴力団だからね。石原都知事と激しい知能戦を繰り広げてるよね」
「吉田さんが、カラス喰ってましたよ」
「あぁ。あいつもカラスが大嫌いだからね。お気に入りの生ゴミ捨て場の生ゴミをよくカラスに持ってかれるんだよ」
「あー。だからなんですか」
「そう。いつも『あの黒装束め。喰ってやる』って言ってるから」
そんな話をしているうちに、僕らは河原にたどり着いた。
さあ、今日は一日、レッツウォッチング雲です。僕はモモサキに言った。
「雲、撃ち抜いてみてよ」
モモサキは「いいですよ」と言って、雲に向かってピストルをぶっ放した。
弾丸はみるみる空へと飛び上がった。
「いいぞ!雲を撃て!撃て!撃て!撃て!ホラ撃て撃て!いけ!ホラ!行くんだよ!
撃て撃て撃てえええええええ!!いいぞ!ホラ撃ってしまえ!いいぞいいぞ!
撃て!撃て!撃て!撃て!撃て!撃て!撃て!撃てええええええええ!!
雲!雲!突き抜けろ!雲突き抜けろ撃つんだよ!ホラ撃てよ!!撃て!!」
しかし、途中で鳩に激突してしまいました。血を吹きだしながらみるみる真っ赤に染まっていく鳩が僕の顔に落ちてきました。わあ。鳩の死体だ。気持ちが悪いなあ。鳩は僕らに話しかけてきました。
「撃つなよ(苦笑)」
モモサキは「黙れ!」と叫び、ピストルを鳩に撃ち続けた。
パン!パン!パン!万パン!
ぐったりとした鳩に僕は一言、声をかけた。
「カラスに生まれればなあ…って思うことなかった?」
鳩は死ぬ直前に言った。
「カラスになりたいと思ったことはない。鳩で良かったと思ってる。
でも、雲になりたいと思うときはたまにある。」
その後、僕らは雲を撃ち抜いて、その欠片を鳩の死体にふわりとかけた。