境界蝕
徐 悠史郎
私と声との隙間で咲くバラの思惟
半睡の岸辺で眼のように
眼……が 硝子空を夢みてうたい続ける
星と息の往還 ここから 土の裂け目が始まった
眼窩にまでさし延ばされた凪の水辺に
空の裏側に生えているポプラを真似た影のない
立ち並ぶ百三本の蒼黒い墓標
あかいもう一本のバラ
風は在らざる秋…西から吹き寄せ
つ と在りはじめた私の茎めいた唇のすきまに
草土を戦かせながら這入り込む どこか
で 硝子の割れる音。あかい
階調の切れ目・口から漏れ落ちる花びらの触を
ひくひく 私の手のひらの肉はむさぼる