走れ青い鳥
木屋 亞万

透けるレースのカーテン揺れて
弦はさりげなく弾かれていく
庭から伸びる仲良しな枝の先
蓄えていく思いつきのメロディ

楽譜に記録する事をあきらめた少年
鉛筆を放り出してハミングする
息を吸えば枝葉の蓄えた水が
ビオラの音色で肺に流れ込む

晴れの日には弦の歌を唄い
雨の日には打楽器で曲を奏でる
風と光のハーモニィに反応する鼻
雨粒と大地のうねりに打たれる口

少年は長閑な農村において
想像と創造の渦を覗くことができた
鳥のソロより川のアドリブを好み
雷の変調に胸を高鳴らせていた

耳を澄ませば音の山を歩ける
目を閉じれば此処以外のどこへでも
鉛筆を机の端へと転がして
大きすぎる椅子にもたれ掛かれば



これはまだ少年が純粋に少年であった頃
世界がひそかに彼を愛していた頃の
彼がまだ学校に行っていなかった時分の話
彼が目を開き耳を閉ざしてしまう前の話だ



自由詩 走れ青い鳥 Copyright 木屋 亞万 2008-04-20 15:17:14
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象徴は雨