ひとひら、薫る
見崎 光

桜の淡さ
光陽に咲く
冷たさを残す入り口で
若葉と戯れる春風は
蕾の鼻先をくすぐった


弾ける音が聴こえてきそうな
澄んだ青空の下
起きているのか眠っているのか
定かではない雲と心情


鏡に映る乏しい笑顔に
精一杯の元気をそそぎながら
鳥の声を探してみたりして…


か弱い薫りはまだ
誰の心も掴んでいない
春に酔う桃色の花弁でさえ
誰かを捉えてはいない


光陽の画
ヒールを鳴らす影
ゆったりと過ぎる雲
全ては
春ののどかなシーン
自然の摂理


ひとひら
桜が開くたび
薫る
誰かの面影


ようやく落ち着いた素振りを
誰かが攫ってゆく午後のひだまり
繰り返す鼓動が確かにしていく


さくら

ひとひら
薫る


光陽と繋ぐ月夜の霞
漂う薫りは柔らかく
誰かを想う蕾の迷い
日和に弾む淡い夢






自由詩 ひとひら、薫る Copyright 見崎 光 2008-04-17 21:44:26
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