深夜環状線
青木龍一郎
えぐられたスーパーカーが深夜環状線をぶっ放す。
スーパーカーの上にしがみついている女はしきりに「怖い怖い」とニヤニヤしている。
僕はそれを自らの脚のみで追いかける。
僕ら真夜中を風となる。
夜中のハイレベル追いかけっこ。
深夜2時48分。
逃げるスーパーカー。
追う僕。
とっくに寝た君。
次の日起こる戦争に備える小学生。
杉崎美香は既にフジテレビに到着している。
オレンジのライトに照らされた道はしたがってオレンジ色。
その中をストレイトに進む僕ら。僕ら以外の滑走者は居なかった。
ガラガラオレンジロード駆け抜ける僕ら。
あぁ、いくつになっても僕ら追いかけっこってる。
僕が呼吸法を変えた瞬間、スーパーカーの上の女が屁をこいた。
夜中に女の爆音を響き渡った。ドゴーンドゴーン。2発。
僕は「くせー」と言って走り続けた。
ちなみにスーパーカーを運転しているのが猿だということに気づくのはこのちょうど10秒後である。
スーパーカーは自ら発するぐちゃぐちゃの光で前方を照らしている猛スピード。
僕はずっとスーパーカー追いながらもまったく疲れない。
むしろ着実に髪の毛が抜けていく。
消耗するのは「体力」か「髪の毛」の選択で僕は「髪の毛」を選択していた。
深夜3時03分。
逃げるスーパーカー。
追いハゲる僕。
怖い夢にうなされてる君。
夜中トイレに起き、放尿中、背後から何者かに鈍器で襲われ、出血多量で死亡したおじいちゃん。
夜中だというのに「ただいま注文が殺到しております」と言い放つ24時間テレビショッピング番組。
スーパーカーの女をピストルで撃つと、女は車から転げ落ち
アスファルトの上をゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロ。
僕(ぼく)はそれを踏みつけスーパーカーを追った。
後ろでは女が、血を流して「痛い痛い」と喜びながらのたうちまわったいる。
僕はついに笑い出した。
キキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキ
笑いながらスーパーカーを追う。
スーパーカーははスリップし、爆発した。
僕は道路の上、立ち止まった。
世界?
ここ世界?
違う?環状線?
君は今もなお、ベッドの中で苦しんでいる。
夜なのに休息できないなんて可愛そう。
怖い夢を見てしまっている。
怖い夢なら僕だっていっぱい見てきた。
君の分も見てあげたいよ怖い夢。
ついでに僕はすっかりハゲてしまった。
今から寝れば君の怖い夢を見てあげられるかもしれない。
寝よう。
ここで寝よう。
今、僕は道路の上に居る。
アスファルトが少し痛いけど我慢して寝るよ。
よっこらしょ。
ほら、道路が横向きだ。
このライトに照らされて僕は寝るよ。
おやすみ。
おや、向こうから車がきた。
まぁ、いいや、僕はどくつもり無い。
おや、なんて大きいトラックなんだ。
こんなものに轢かれたらひとたまりもないぞ。
痛そうだ。
怖い怖い。
そうか、これが怖い夢か。
まだ、寝てないのに。
おかしいね。
笑っちゃう。
あれ?
トラックを運転しているのは怖い夢にうなされていたハズの君じゃないか。
待ってよ。
轢き殺さないでよ。
僕は君の怖い夢を代わりに見てあげようとしてここで横になってるだk…ぷち。