孤猫
三奈

なまえ、ください。




道路の上に横たわる、かぞく
駆け寄った。悲しくて、悲しくて。

もう、しんでいるのでしょう?
あぁ、どうかこれ以上
ひかないで、踏まないで

魂は、お空にのぼって
雲に溶けた


おかあさんは
青に溶けた

おとうさんは
月に溶けた

さぁ、ぼくは
何に溶けるの?






迫ってくる、車
頭に浮かぶ、ただ一つ
叶えたかった、ゆめ






(ずっと、なまえが、ほしかった)

(ぼくと、おかあさんとおとうさん、それから、いもうとの)






運転手の焦る表情
響き渡ったのは、急ブレーキの音
さて、ぼくがしぬのが先か
車が止まるのが先か



春の風が優しく吹いて

ゆっくりと目を閉じた
怖くなんてない、でもね

なぜだか無性に、泣きたくなった。














自由詩 孤猫 Copyright 三奈 2008-04-17 00:16:45
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