彼女、清潔につき有毒
木屋 亞万

彼女の潔白な素肌、
ずっと透明なまま
水面で服の中身となり
日々潤いを保ちつつ
日々最高の状態に更新、

白く淡く蒼く細く
叩くと高く響くだろう
手足は長くしなやかに
大きくわずかに鋭く
輪郭は優しく照る

つい先刻まで硬い
殻に守られていたような
剥き出しの脆さに
烈しく本能は刺激される
抑えきれない渇きを
満たす方法のないまま
舌を巻いて叫び喚く
目の前に肌越しで水分

きっといつまでも
美しさは保たれて
日に日に艶めかしさは
増していくのだ、ずっと
離れず傍に居たくなる
依存する性質に変質

汚れしかない我が身が
洗練されても格が違う
安定して流れる水と
流れを真似る泥の差異
一粒の砂粒でもあれば
異物となり流れを乱す

黒髪が陽光に照らされ
肌は微かに発光している
羊水に似た懐かしい色
鋭利な指は優しさをも
包み込み周囲に与える
彼女は気付いていない

僕が勝手に追い掛け
彼女から受け取っている
目を閉じて走れず
世界を見て走れず
彼女を見れば走る事が
可能になるのだ、けれど
それは、過ちの始まりで
僕は毒を浴びるように

毒が蓄積してる事
気にしないで走る
わかっている事に
気付かないで走る
砂が胸に詰まって
苦しくなろうとも
浴びるように、彼女


自由詩 彼女、清潔につき有毒 Copyright 木屋 亞万 2008-04-16 21:22:20
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