ゆるゆる日和
渡 ひろこ
「ダックス!」
といきなりいわれた
ソファーでひっくり返って
ノビている姿が
ペットショップで見かけた
ミニチュア・ダックスにそっくりだという
あんなふうにやわらかい腹をムキダシで
無垢に眠れたらいいのだけど
疲れたダックスのまわりを
カンガルーがぴょんぴょんはねまわる
ベッドの底板やローンの終わらない壁
に 穴をあけても悪びれず
ありあまるエネルギーの転化方法
(オシエナカッタッケ?!)
飼育のマチガイに
今さら気づいても遅く
なにかシツケるごとに
ウザイ と鳴く
かと思えば
「日本のGNPの何%は…」などと
何処ぞのウケウリをまことしやかに謂う
いんてりじぇんすのカケラをみつけた
と ダックスはついシッポをふってしまう
カンガルーは
バランスボールに乗ってはずんでいる
両足あげてバランスとれたとハシャグから
(ジンセイモウマクノッテクレ)
とねがう
ダックスはいまだにうまく乗れない
ゆるんだ日溜りに
発散するカーキ色としおれた茶色
あいまいな境界線とびこえて
ほそいクビレとゆるやかな曲線を持つ
カンガルーは
ノビきったダックスの
閉じられた
見えないふくろに
スルリ と もぐりこむ
「詩と思想」2007年10月号入選作品