きみを想いながら
もも うさぎ
ああ
きみはどうしてこの世界に来たのですか と
機関士が言ったので
そうだな、僕は
なにひとつ持ってこられなかった と こたえた
砂漠の砂は日々減ってゆき
海はすぐそこまで迫って
僕は両腕をひろげて
眠るきみに日陰をつくった
そうして僕も ずいぶん長いこと眠っていたんだ
呼ぶ声がした
僕は目をあけることはなかった
夕闇は迫れど
僕のこころは 波の向こうに揺れて
ぷかぷかゆらゆら 浮かんで消えた
僕のこころはいつか
ぽっかりと飾られた星にでもなって
楕円を描くレールの上を
廻りながら
たったひとりで 目をつむりながら
きみを想いながら
ああ
どうしてきみは泣いているのですか と
機関士が訊くので
そうだな、僕は
なにひとつ持ってこられなかった と こたえた
〜きみを想いながら〜
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