きみを想いながら
もも うさぎ

ああ

きみはどうしてこの世界に来たのですか と

機関士が言ったので

そうだな、僕は
なにひとつ持ってこられなかった と こたえた


砂漠の砂は日々減ってゆき
海はすぐそこまで迫って

僕は両腕をひろげて
眠るきみに日陰をつくった


そうして僕も ずいぶん長いこと眠っていたんだ


呼ぶ声がした

僕は目をあけることはなかった


夕闇は迫れど
僕のこころは 波の向こうに揺れて
ぷかぷかゆらゆら 浮かんで消えた


僕のこころはいつか
ぽっかりと飾られた星にでもなって

楕円を描くレールの上を
廻りながら
たったひとりで 目をつむりながら


きみを想いながら





ああ

どうしてきみは泣いているのですか と

機関士が訊くので


そうだな、僕は

なにひとつ持ってこられなかった と こたえた








〜きみを想いながら〜


自由詩 きみを想いながら Copyright もも うさぎ 2008-04-15 10:37:08
notebook Home
この文書は以下の文書グループに登録されています。
契約