[花]
東雲 李葉

悲しい息が漏れたのです。
視界はとうに滲んでいます。
冷たい水は流れ出し、
花瓶に挿した花たちは何も知らず笑います。
さよならという言葉なんて、
無くなってしまえばいいのに。
終わりが分からぬ恋だったなら、
夢の中で今でも貴方と踊れたのに。
一人の部屋では温い香りが、
強くもなく弱くもなく私の涙を誘います。
このまま嗚咽が絶えなかったら、
優しい色の花びらが水玉模様に褪せるでしょう。
窓の外では冷たい雨が、
崩れる私を隠すように激しく窓を打っている。
世界中でこの部屋だけが切り離されてしまったように。
泣き疲れて眠ったらどこかへ行ってしまえばいいのに。


咲かせることしか知らない私です。
未来のことなど分かりません。
色付くことしかできない私です。
触られないと意味が無いのに。
散ることでしか泣けない私です。
貴方とこの実を結ぶことなく。


花瓶の中から一輪選んで。
子供の頃したように彼を想って花占い。
嫌いになんてなれるわけないから、
花びら幾つ落としても心は一つも変わらない。
雨が止んで空が晴れたら、
私の涙は枯れ果てて地面に模様を作るでしょう。
だけど貴方がくれたこの花だけは、
萎れることなく、
乾くこともなく、
冷たい涙を吸いながら一人の部屋で咲いています。


自由詩 [花] Copyright 東雲 李葉 2008-04-14 21:55:18
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