ノート
乱太郎

夜は僕の肌をなめまわし
僕の知らない僕のこころと密会する


君は君の手垢をつけ
僕は僕の手垢を付けていく
君と僕の手垢が重なることはない
見つめあうことのないふたり


洗剤は合成の方がいい
汚れが簡単に落ちるから
こころはこどものままでいい
一度付いた汚れは簡単には落ちない


扉が僕を閉じ込める
鍵は掛かってないのだが


白樺の木々が背筋を伸ばして立っている
誰か笛を鳴らして
起をつけ って言った?


机の上で鉛筆と消しゴムが笑っている
こいつの書くものって
ほんとにくだらないよな


六十億人もいて
孤独だと思っている人が
自分ひとりだけだったら
孤独な孤独だ


玄関ポストが口をだらあんと開けて
誰かの喜びを待っている


四角い太陽と丸い部屋
そんな宇宙があってもいい


いつか
また
どこかで
野原で遊ぶ小鳥にささやいた
それきり
そこには・・・
いつの日か
いずれ
その場所で


はら減った
はら減った
またひとりの瞳が閉じた


真実の言葉を吐いたことのない真実の口


四つの歌を聞かせてほしい
恋人に
母に
蟻に
海に
私は風のようにただ其処にいる


石を投げつけられた水面は
まるで臆病者みたいに震えている


無名の兵士たちよ!
君たちの墓を掘り起こす者は誰もいないだろう


自由詩 ノート Copyright 乱太郎 2008-04-13 19:40:01
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