それはとてもめずらしいかたちをしている
ホロウ・シカエルボク
それでも僕が君の手をとるのはきれいな気持ちでもなんでもなく
ただそこに君がいて欲しいからで、つまり
理由がどうのって話じゃないただの僕のエゴというわけなんだ
僕らはときどき流行のドラマを信じるみたいに
互いの気持ちにワックスをかけて光らせようとする
だけどそんなことは本当はどうでもいいことで
僕はむしろ君を思うことで自分の中身がどれほど汚れたものを抱えるのかという部分を
正直さと呼んでもかまわないと考えるんだ
悩まなくなったんだ、そういう気持ちを肯定すると…刹那的だって君は言うかもしれないけれど
刹那だって連続すればいつかは永遠にだってなれるかもしれない(もちろんそれは僕らが息づいているあいだということだけれど)
だからあれこれと約束をするのは止めた、そのときそのときの想いの在り方で
強かったり弱かったりしながら君の手をとる、その強弱が
そのときそのときで君が抱えてるものの振幅と見事にシンクロしたりする瞬間があったりしたら
そのとき僕らはもう少し
確実な関係になれるんじゃないかと思うよ
一瞬の繰り返しを僕らは抱いて
それが明日も訪れるような夢を見るんだ
だから僕が君の手をとるのはきれいな気持ちでもなんでもなく、ただありきたりの僕としてどれだけ君と幸せに暮らせるかという
実験みたいなものだと思ってくれればいいかもしれない、そうすれば君は気楽な気持ちで
これからの毎日を過ごすことが出来るかもしれない、難しいことは考えなくていいよ、難しいことは何も考えることは無い、そんな考えにこめかみを痛めるのは僕の役目でいい
君を無邪気な子猫のようにすることが出来たら僕の勝ち
難しいことは何も考えることは無い
それでいくつかのカレンダーが任期を終えてゴミ箱に放り投げられたとき
記憶のカゴをひっくり返してすべてを語り明かそう
ときどきはそういったことが絶対に必要になる
作戦会議の多い軍隊は勝率が高いものさ
だから、君の手をとったときの僕の手の温度について、あれこれと思いを巡らせるのはもう止めて
君は黙ってその温度を握り返せばいい
手のひらが感じるものは生体としての組織に過ぎないよ
だからくだらないことを気にするのはやめなって、ワックスをかけたがってばかりいると
そのうち足をとられてすってんと転んじまうぜ
そんなふうに終わった一日のこと
僕らはもううんざりするくらいこなしてきたはずじゃないか
君とのつきあいのなかで、僕が覚えたものはこれさ
正直さだって技術のひとつに違いないんだ
僕はライセンスを手に入れたよ
さあ、君にも
見せて
あげるから