沈殿
縞田みやぎ
金魚の水 を
かえないまま
入浴しているのです
もう ひとつきも
散ってゆく水面が
茶色く さがるのです
あるでしょう あの
あぶくが
あれを金魚は のみこむ
わけですけれど
ぶぎぶぎぶぎ と
あぶくがねばり
茶色い水面の むこう
赤いひれ
黒いひれ
ひれ
いきておらるるの です
それでも
そうでしょう
なにも わたしの金魚
です から
入浴していると
電話がなるような
気が したのです
知っているのだぞ
知っているのだ ぞ
知って
わたしのあぶくは
ぶぎぶぎしないふわ
ふわ
風呂あがりには
にがくて
黒いひれ
赤いひれ
のみこめや しないの
です
いっそ餌のなしで
期待の ひれ
うっとりと
ぶぎぶぎの水面を目指す
下向きの金魚を
あぶく ぶぎぶぎと
のみこむ 金魚は
金魚
は
電話のベルが
ならないでいるのに
ふわ の あぶく
あらうだけで のみこめや
そうで しょう
呼ばれるような
気がしたの です
知っているのだぞ
知って
のみこめ や
しない
赤いひれ
黒いひれ
許すも なにも
わたしの 金魚 です
から
もうひとつきも
待って
入浴 しているのです