帰路
かや

バスは行ってしまって
ロッカーが三回も中身をぶちまけられている間に
発車してしまって
投げやりかつ従順に仕舞い終わったら
コートの裾は後悔の埃まみれだ

ぴかぴかの手を颯爽とひと振り
帰って行く同僚を恨み
アルコールを置いていないコンビニを睨み
追い越していった自転車を
蹴飛ばしてやりたいと思う

まったく肉食獣そのものの目で
甘ったるい柑橘系の専ら南国的な酒を求めて
てらてら光る安物の靴はいつの間にか血の涙を染みだし
涎も乾く三軒目
妥協したパイナップル果汁サンジッパー
レジのお兄さんにそのままでいいですー
なんて媚びを売る
訝る店員と自動ドアを尻目に
晴れて私は自由の身

マンホールの蓋と乾杯をしたら
ああ世界は私のためにある
私は世界のためにない

今酔っ払って階段を踏み外して死んでも
良い人生だと思ったんだ
みじめたらしくても
良い人生だと思ったんだ




自由詩 帰路 Copyright かや 2008-04-10 00:38:27
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