帰路
かや
バスは行ってしまって
ロッカーが三回も中身をぶちまけられている間に
発車してしまって
投げやりかつ従順に仕舞い終わったら
コートの裾は後悔の埃まみれだ
ぴかぴかの手を颯爽とひと振り
帰って行く同僚を恨み
アルコールを置いていないコンビニを睨み
追い越していった自転車を
蹴飛ばしてやりたいと思う
まったく肉食獣そのものの目で
甘ったるい柑橘系の専ら南国的な酒を求めて
てらてら光る安物の靴はいつの間にか血の涙を染みだし
涎も乾く三軒目
妥協したパイナップル果汁サンジッパー
レジのお兄さんにそのままでいいですー
なんて媚びを売る
訝る店員と自動ドアを尻目に
晴れて私は自由の身
マンホールの蓋と乾杯をしたら
ああ世界は私のためにある
私は世界のためにない
今酔っ払って階段を踏み外して死んでも
良い人生だと思ったんだ
みじめたらしくても
良い人生だと思ったんだ