桜の下
はな
花のあいだで
ゆれている、そらの
うすくひかる すずの音に
目を閉じずに
さよなら は言えず
いちばんかんたんな発音で
ゆびのてっぺんを空に向け
開いたままで
ふいに
ちかづくように降り始める
雨は
泪のぬくもり
ばいばい
たたみのにおいの
あくりるの
においの
あなたを
ちいさくくりかえすように
なぞる
ふあんていな道のまんなかに
つま先を付ける
あなたは
あやふやなかおのまま
やさしいじゅもくのように つっ立っている
ちいさな宇宙に
ゆらゆらと
はなびらが混じり
ひこうき雲が
あわさのすきまを 編んで ゆく