千年桜
石瀬琳々
つとさしのべる指先から
はらはらと はらはらと
こぼれては落ちる春の
あれはあなたと私の約束です
遠い日のひめごとです
はらはらと 散ってゆく
くれない 淡紅 淡紅白
そして 白 しろ 白
私の言葉は形にならない
こぼれるだけです
指のあいだから むなしい隙間から
あの日から私は心を置いたまま
身を焦がすだけの
たまゆらとなりました
今宵も小指に紅をからませ
すっと横にひき
待っています 待っています
またこぼれてゆく 指のあいだを
すくおうとすれど
甲斐のないしぐさです
あなたのいとしい指先から
はらはらと はらはらと
私もまた落ちて こぼれて
夢の逢瀬を乱れ咲く
あの春もこの春もその春も