素敵過ぎる夜明け
紫音
ああ、神よ
何故私を生んだのか
何故世界を創ったのか
答え、神なんていないから
何も生みもしなかった
何も創りはしなかった
だからちっぽけでどうでもいいような願いは
叶いはしないし敵いもしない
星に願ったって同じこと
流れ星はとうの昔に石の塊で
そこに意思なんてなく、奇跡なんて起きはしない
運よく衝突するような奇跡「的」なことはあったとしても
眺めている星は
見えているようで幻かもしれず
世界なんて手の届くほんの4〜5mしか確かめようがない
花瓶に触れることはできても
窓の向こうの丘は触れることはできない
丘に触れるときは
花瓶なんて見えもしない
見えず触れずただ信じることだけで生きているなら
ルイスの書く世界だって信じられるさ
そこにはアリスが見るものなんて何もなくて
もしかしたら六本木なのかもしれないのさ
場末のシネマみたいにね
現実と創作とは紙一重で表裏一体で区別なんか付かなくて
街が広すぎて孤独だから泣くのはきっと
女じゃなくて男だったりするわけ
夜更けに目を覚ませば
聞こえる寝息が夢の続きを見せてくれる
寝息は鐘の音のごとく鳴り響き
二日酔いの頭で反響していたとしたら
悪夢の続きだって見せてくれるに違いない
ステキな神はサイコロを振りもしないし
何かを決めもしないから
いてもいなくても同じだから
やっぱりいないに違いない
肋骨で遊んだりもしなかった
七日で世界を創れるなら一日で世界を消してみせろ、って
グラグラ揺れる意識の奥で叫んでみる
喉が焼けて声が出ないだけだけど
なんて外は長閑なんだろう
朝まで飲んだ次の日は快晴って法則があるらしい
きっと本当だな
朝陽が眩しすぎてついつい目を閉じて
知らないうちに朝日が跋扈してたりするのも
きっとそんな法則に違いない
あの旗は海軍旗の真似だよな、って言ったら
左の方から空き瓶が飛んできたよ
コカコーラなのが笑えるけど
世界とか思想とか
本当はみんなそんなことどうでも良くて
自分だけ良ければそれでいいのだけど
そう言っちゃうとかっこ悪いから
偉そうなこと言ってみたり
山荘に篭もってみたり
やってることが無茶苦茶になってくる
何も考えてないから知らないよ、って言えたら
どんなにか楽なことか
戦争なんてアホらしくてやってられなくなるよ
そこに意味も価値もないんだから
な〜〜んもない
神とか出てくるからややこしくなる
そうするとアンチ神が出てきて
阿片だよね、とか言いながら
自分が神にでもなったつもりになっちゃって
最後は赤い海でカオスの渦ができるんだ
海は偉い奴だから
いろいろなものをどんどん飲み込んで
たまに原油なんかが浮いてみたりして
泡だっているところなんて
ツンとした酸味でたまにデレって輝いてみたりして
ツンデレだよ、ツンデレ
愛してる、とか言いながら
全部浚っていって綺麗にしてくれる
海は偉い奴だから愛も偉いんだな
誰も信じてないのに信じたがっているのは
神と愛くらいなものだから
ソクラテスも悩むわけだ
ただ一つ間違えなのは
「してもしなくても後悔する」んじゃなくて
「知ってても知らなくても後悔する」ってこと
いないって知ってても知らなくても
幻想だって知ってても知らなくても
どっちにしても半分の後悔と半分の後悔で全部後悔
ヴァレリーの海で大航海
このちっぽけな手の届く世界が全てなら
それはきっと小宇宙で
燃え上がれ、俺のコスモって叫んでたりするんだろう
神なんていないのに
愛なんて幻想なのに
恥ずかしいったら
どうせならウォッカを飲んで
燃え上がれ俺の胃袋って叫んでる方が楽しいさ
それとも燃え上がるのは種だったりして大炎上
神なんていないから
何も生みもしなかった
何も創りはしなかった
だから楽しくも惨めで
こんなにもアルコールの芳しい香りに包まれながら
トイレに駆け込んでいる