双生児
凛々椿

愛することに疲れたのかい?

眠らず夜闇に目をこらす君に
話しかける声は 僕のものじゃない
どれだけ声をからしても呼びかけても呼び続けても
僕の声はいつも君には届かないけど

愛することは大変かい?
息をすることは 言葉を交わすことは?
生まれたことのない僕の前で 君はいつもため息をこぼす
僕にはその重さが分からない
君は
僕の姿が見えたならうらやましいと呟くのかもしれないね
僕は生まれてこなかった
君は生まれてきた

愛することは大変かい?
生きることは 楽しくないのかい?

君が生きた時間の分だけ 僕はいろんなところを旅したよ
僕は君に伝えたくてしかたがないんだ
この世界は広い
生きることがつらいだなんて絶対にうそだ
死にたいだなんて言わないで
僕の苦しみを助けて

そう伝えたくてしかたないのに 君には届かないんだ
眠るのが恐い
恐い夢にうなされるのはもうたくさん
そう顔をしかめながら 目をつむる君には

君の目の前にちらばる死のかけらに
僕はまるで僕が否定されてしまったみたいで苦しいよ

君はいつか信じてくれるかい?
無作為にこの世に生まれてきた君の現実は
本当はとてもきれいなんだ

いつか 信じてくれるかい?



自由詩 双生児 Copyright 凛々椿 2008-04-07 15:54:21
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