遠い朝、泣かない夜
いとう
苫小牧の少女が一篇の詩を書き上げる頃
渋谷の未成年たちは今日の居場所を探す
小さなハコで鮨詰めになって揺れながら
沖縄の夜の珊瑚礁を思う
糸井川の漁村の少年は
明日の朝の漁を邪魔しないよう
小さな自分の部屋に閉じ込められ
暗闇の中、昼間に聴いた流行歌を口ずさむ
すべての人に
すべての夜を
夢を見るには早く
あきらめるには
ほど遠く
病院の地下の霊安室で
実習生が泊り込みの番をする
ホルマリンの臭いの奥で
生きてきた人々の気配が消えていく
すべての人に
すべての夜が
ときどきには
訪れないまま
眠らない人々の溜息と吐息が
紫煙のように目的もなく立ち上り
それはまるで
愛しいものを知らない嘆きのように
呪いとなって降り積もる
すべての人と
すべての夜に